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前回記事
あのプロジェクトは今【Starbucks Odyssey】
2022年9月に発表され、NFTをマーケティングに利用する試みとして大いに注目された「Starbucks Odyssey」ですが、プロジェクトの発表からちょうど1年経ちましたので先日SUSHI TOPで施策効果を振り返る事例共有会を行いました。
共有会自体はSUSHI TOPクライアント向けのクローズな環境での共有となりましたが、社内で共有しているだけではもったいないので定期的にNFTのマーケティング活用文脈を掘っていければと思っています。
Starbucks Odyssey概要
Starbucks Odysseyは2022年9月にスターバックスから発表されたNFTを利用したロイヤリティプログラムです。ゲームやクイズをクリアすることでNFTやポイントがもらえ、特典が付与されるよくある仕組みですが、世界的に見ても大手がNFTのマーケティング利用を試みる最初の事例だったこともあり、大いに注目されました。
💡【ポイント】既存施策から切り離された実証実験的プロジェクト
ちなみに、みなさんがよく利用しているであろう既存のポイントシステム【Starbucks Rewards】とはポイント互換性はなく、あくまでスターバックス社内での実証実験としての位置づけかと思われます。スターバックス公式SNSでもStarbucks Odysseyについての言及はありませんでした。
Starbucks Odysseyにはデフォルトでクレカ決済やウォレット自動生成等の機能が搭載されているため、あくまで推測になりますが「NFTを利用するUI/UXを高めたらほんまにウチの顧客は使ってくれんのか?」という点を検証していたのではないでしょうか
1st Mover事例として日経などでも取り上げられたため、Web3界隈に生息している人間であれば知らない人がいない事例であり、よその勉強会などに参加すると、よく「成功事例」として取り上げられておりますが、このメルマガでは「本当に成功事例なのか」を掘り下げます。
施策結果
さて、本プロジェクトの効果を見てみましょう。
NFTを利用しているので、その売上や流通額をトークングラフから分析できるのがブロックチェーンの良いところです。
Starbucks OdysseyのNFTは2023年3〜8月にかけて4度販売され、注目を集め投機層の流入もあり毎回売れ行きは好調、総売上は2億円となりました。最初こそ、投機層参入による高値での二次流は見られましたが、回を追うごとに二次通額は激減、最終的には1割ほどに落ち着きました。この金額感の大小を他プロジェクトと比較すると、日本ではMEGAMIやNTPと同じ金額感となります。
参加者数では、Odysseyメンバーは最大でも2.5万人ほどと推測しています。
Starbucks Rewardsとのポイントの互換性はないものの、RewardsメンバーのみがOdysseyに参加できる設計になっていたため、Rewardsメンバー全体5,800万人中、Odysseyメンバーは最大でも全体の2,000分の1ほどかと思われます。
投機要素の薄い商材であったため、CloneXのようなPFP系NFTと比較すると金額感は劣りますが、実証実験であることを考えると、流通件数と金額から十分なデータが得られたのではと思われます。
販売方法もその都度変えてきており、どうやったらユーザーが購入しやすいのかの検証が行われている様子が伺えるので、この学びを受けてスターバックスが次にどんな施策を展開してくるのかには俄然期待が高まりますね。
結果考察
施策の展開を見ると、Starbucks Odysseyは箱庭でのNFT検証施策として展開されていたことがよくわかります。
ただ、RewardsメンバーのみがOdysseyに参加できる設計になっていたため、投機層の参入によりターゲットがズレた可能性があります。初期の無料配布NFTが10~20万円ほどの価格で転売されていることや、NFTのリスト率の高さやSNSでのファンの反応を見るに、Odysseyの参加者は投機層が大半を占めていたのかなと。
Odysseyのインセンティブに【毎日コーヒーが飲める権利】があるのですが、それを獲得するために有料NFTを購入すると、$400(約6万円)必要になってしまい、毎日スポットでコーヒー買ったほうがコスパが良くRewardsユーザーがあえてNFTを購入する理由は薄かった印象です。
💡【ポイント】Gas代の観点
NFTをロイヤリティプログラムとしてパブリックチェーン上で利用することを考えると、Gas代がネックになります。Ethereumではなく、Polygon上で実装されたことからもその観点を考慮していることがわかりますが、Rewardsメンバー5,800万人が利用することを考えると、NFTを1つ配布するだけでも掛かるGas代は以下のようになります。
Ethereum : 1NFT配布あたり 約1,000円 → 580億円
Polygon : 1NFT配布あたり 約30円 → 17億円
Astar : 1NFT配布あたり 約0.01円 → 58万円
※NFT配布金額はSUSHI TOP社調べ ブロックチェーンの混み具合によって費用は変動
Gas代が安いとされるPolygonですら、大企業が抱えるユーザー数で乗り込んでこられるとGas代だけで非常に大きなコストとなります。
では、Astarであれば良いのかというとそう単純な話でもなく、新しいチェーンには古参チェーンにある便利なツールやライブラリがありません。すべてを自分たちで作る必要があるためその分コストがかかる点がネックです。
Rewardsユーザーに既存ポイントよりも遥かに高い利便性を提供できる見込みが合ってそれがコストに見合うかの経営判断になります。
Layer2の技術などもありますが、コストが下がり、数百万件のNFT配布に耐えられる堅牢性があるのかについてはまだまだ未検証です。Gasコストが高い状況では、コーヒーのような低価格な商材よりも単価の高い高価格商材のほうがコストを飲み込みやすいのでブランド物などからNFT利用が進んでいくのではないでしょうか。
📌【注意事項】Astarは中身のロジックが変更されGas代が上がったので現在は状況が異なります。
💡【ポイント】NFTマーケティングは2階建て
今回のStarbucks OdysseyではNFT = ポイントに近い即物的なインセンティブ訴求施策になっていました。あくまで、Rewardsの延長という形です。
ポイントのような定量的なインセンティブではなく、リリース当初に案内されていた【バーチャル農園への案内】といった定性的なインセンティブはこれから展開されるのかもしれませんが、今回未実装の認識です。
私はNFTの価値は定量価値よりも定性価値にあると考えているので、この辺りの検証が進んでいると非常に有意義であったなと考えています。
というのも、NFTは定性情報、個人の興味関心やロイヤリティの可視化に向いている技術です。既存のポイントシステムに競合するものではなく、2階建てで共存共栄できる概念であると考えています。図で書くとこんな感じかなと。
現時点でインフラ的にNFTのポイント利用が難しいのは事実であるが、スキルの証明やコミュニティへの帰属意識を高める形(保有効果)でのNFT活用は様々な事例が登場してきています。
また、NFTは自社だけでなく、他社や異なるチャネルから発行されたNFTも分析に使用できる点が強みです。今後、メディアやIPに紐づいたNFTが配布される機会も増えるため、【スタバのバーチャルツアー参加者はこのテレビ番組見てんのね】ということが3次元的にわかるようになってきます。
例1)自社発行NFTにメディアデータを掛け合わせた分析 例2)XとInstagram両方の接触者に対しターゲット配信するなどの施策
まとめ
本施策を個人的に誠に勝手ながら総評するのであれば、以下のようになります。
売上観点
施策を実施するコスト < 売上(2億円)、であると思われるので成功。
ブランディング観点
1st Mover事例として様々な媒体で紹介されネットワーク効果⭕
先進的な印象も付きブランディングの意味でも⭕
投機層の流入もあったものの、元々のRewardユーザーは気づいてもいないはずなのでパイは広がっても、マイナス影響はなさそう
実証実験の観点
クレカ決済、ウォレット機能などのUI/UXを実装し、販売ナレッジを貯められた点は⭕
NFTの発行数を絞って販売したことで、Rewardsを利用する一般ユーザーではなく、投機層がターゲットになってしまったことで狙っていないターゲットが流入した可能性
Gas代やインフラの観点からOdysseyをRewardsに展開していくのは厳しい
既存ポイント施策の延長ではなく、定性的な活用方法の検証、特にNFTを所有・バーチャルツアー参加ユーザーの行動変容を見たかった
2回目を実施するのであれば、IPコラボや企業間コラボなどの横展開の検証を進めたいので、しばらくはナレッジを握ったままインフラの進化と市場の理解度醸成を待てば良い
事例共有会をKDDIと共催で実施します
最後に宣伝です。
上記のような事例共有会を1/26にKDDIさんと共催しますので、よければご参加ください。
↓参加のお申し込みはこちらから↓ 「トークングラフマーケティング事例共有会 Vol.3」お申し込みフォーム
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■ 詳細
「SUSHI TOP事例共有会Vol.3」を、KDDIさまと共同開催! KDDIさま側で進めているαUプロジェクトの内容や、αUwalletでのNFT配布事例、ウォレットタイプごとのUI/UXによるNFT取得率の違いなどのナレッジをご紹介いたします。
タイトル:「トークングラフマーケティング事例共有会 Vol.3」 日時:2024年1月26日(金) ・18:00~19:00:事例共有会(KDDI施策など) ・19:00~19:45:懇親会(オフラインのみ) 場所
Shibuya Open Innovation Lab: SOIL(ソイル)(〒150-0002 東京都渋谷区渋谷1丁目13−9 渋谷たくぎんビル 7階) ※オンライン同時開催(Google Meetを使用) ※渋谷駅B3出口から宮益坂方面に徒歩1分
料金:参加無料 内容
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