Opensea VS LooksRare, NFTマーケットプレイス同士の仁義なき戦い

#171 2022_0126のMainTopics

nobumei

Jan 26, 2022

#171 Substack

スーツ vs コミュニティの戦いが始まっている！

前回記事：[Daily Topics]DAOはわかったけど、SubDAOってなんなん？

解説ラジオ：ラジオで聞くならこちら

English ver：英語訳してくれていた方が電通に転職されてしまったのでHelpfulです

This newsletter is now being translated into English on the same day. I'm really grateful for the instant translation !

2022年1月10日にローンチされたLooksRareの勢いが衰えません。オンチェーン上のデータを見ても取引量がOpenseaよりも高い状態がローンチ以降続いています。

LooksRareが現れてからというもの、NFTの総取引量の9割を締めていたOpenseaのシェアをLooksRareが奪っていることが時系列順のシェアマップを見れば明らかです。すごいぞLooksRare

https://dune.xyz/embeds/345645/658393/78e3d70a-1fec-47c7-9d78-546f8a7fae04

https://dune.xyz/embeds/362117/689607/fb0bd43c-7add-4896-be46-51ea79b65371

これは中々に興味深く、Openseaにとって今後の驚異になっていく可能性があるので、詳しく見ておきたいと思いました。

LooksRareとは

LooksRareはDeFiの仕組みを組み込んだ新しいタイプのNFTのマーケットプレイスです。1月10日にローンチしたばかりでまだ2週間しか立って以内にも関わらず、Openseaを上回る取引量を叩き出しています。

Opensea LooksRare Public ot Private Public(誰でも出品可能) Public(誰でも出品可能) 手数料 2.5% 2.0% DeFi 未実装実装独自トークンなし $LOOKS 運営主体株式会社コミュニティ（を目指す）

LooksRareはOpenSeaと同じようなパブリック型のNFTマーケットプレイスなので、出品者はEthereum上のNFTであれば自由に出品可能という点は同じですが、独自トークン$LOOKSを実装していることやStakingの仕組みを導入していることが異なる点です。

■ Openseaと異なる点

手数料はOpenSeaが通常2.5%取るところを2.0%に抑えています。
OpenSeaと異なる特色としてコミュニティーによる運営をかがげています
独自トークンを発行しておりリリースのタイミングでエアドロップを敢行
1. 過去OpenSeaで３ETH以上の取引があるユーザー、かつ、LooksRareにNFTをリストすることを条件にしたことにより、出品が爆増した
2. LooksRare上でNFTを取引することによっても$LOOKSが付与される
$LOOKをStakingすることができ、APYは661％(2022年1月時点）

LooksRareのインセンティブ構造

LooksRareの強みは独自トークン$LOOKを発行し、Stakingさせることで高い報酬をユーザーに還元しています。$LOOKSを手に入れる方法は初期のAirdropを除くと主に３つです。

$LOOKS自体をStaking：APY661％
LooksRare上で取引を行う：287M/day(Ethereumのブロック生成数による)

現在の$LOOKS価格が$3.7なので、10億円近くを1日で配ってるってこと？！
Uniswap上のLPでファーミングする：APY356％

傍目に見てもとんでもない金額を配り、Openseaに対するヴァンパイアアタックを行うことでユーザーを強烈に引き付けています。

$LOOKSのトークンエコノミーとしては以下のようなサイクルが回っています。

LooksRareがOpenseaユーザーに対して$LOOKSをAirdropする
LooksRareの認知が向上し、初期ユーザーを獲得
ユーザーは$LOOKSを売却するか、Stakingするかを選択することができStakingされると$LOOKSの売り圧を下げることになるので価格がそこまで下がらない
StakingしたユーザーにLooksRareの手数料が分配されるので高いAPYが実現できる
儲かる人が増えるので、LooksRare最高！という口コミが増加しStaking量も増加する
「儲かった」というニュースが最大の広告になるので、LooksRareの認知がさらに高まり、ユーザー数とNFT出品の数も増加
NFTの流通量が増加すると$LOOKSの価値も高まるのでユーザー体験が向上する以下ループ。。。

いまのLOOKS経済圏はアゲアゲの状態です。金が金と人を呼び流通量が増加する構造になっています。

リワード目当ての意味のない自己売買が多かったりするのかと思いコレクションごとの取引量を見てみたのですが、かなり有名なNFTブランドも取引されているようでNFTマーケットプレイスとして普通に機能しているように見えます。

Openseaのヴァンパイアアタックとしてはかなり成功していると言えそうです。

ただ、注意点としてはお金で集まった人はお金がなくなったら雲散霧消していなくなってしまう点です。インセンティブが続くのかどうかは中止してみておく必要があります。

仮にですが、この状態が続き、新しく登場するNFTプロジェクトがメインの流通市場をLooksRareにする自体が頻発してくれば、Openseaの牙城が一瞬で崩れ去る可能性すらあります。

そして、市場はいまそのシナリオを望む状況にあるのです。

Openseaの戦略に潜むWeb3.0業界のペインポイント

Openseaの強みは中央集権であったことです。それはOpenseaのCEO自らがインタビューにて語っています。

参考：[Daily Topics]世界No.1 マーケットプレイスOpenseaの歴史を知ろう

そして、現在のOpenseaの戦略は株式市場への「上場」です。界隈に流れてくるニュースから、Openseaが上場の準備をしていることが伺えます。

■ 上場経験者であるLyftのCFOをチームに迎え入れる人員強化

OpenSeaが上場準備, Long-time Lyft CFO departs to become CFO at NFT marketplace OpenSea | TechCrunch

■ 多額の資金調達

Opensea, a16Zから2,300万ドルの資金調達を完了

Openseaが資金調達をしたことで一時は給付金が配布されるのではと期待されましたが、これは上場への布石と捉えた方が自然かと思うようになってきました。そうなってくると、上場企業がトークンを発行していることは株式との利益相反になるので、Openseaがトークンを発行することは考えにくいです。

Openseaの強みは中央集権であったことですが、上場してしまうとWeb2.0と同じ力学の中でNFTマーケットプレイスを運営することになります。そのため、株式の一存によって、手数料をあげられたり広告が入りまくったりする可能性があります。

LooksRareはその強力なカウンターパンチになってくれる可能性があります。今は全く分散化していませんが、今後数年掛けてガバナンストークンを分散させ、分散型のNFTマーケットプレイスになっていくのではないでしょうか。

まだ顕在化はしていませんが、NFT業界は中央集権型のマーケットプレイスに対抗する分散型のマーケットプレイスを潜在的に求めているのです。

スーツ vs コミュニティ

これはCryptoの外の世界でもよくある対立構造です。大企業が大量の資金と人材を投入して作った事業とスタートアップが気概で作ったサービスのシェア争うなどでよく見られます。

例えば、送金アプリのVenmoとCashAppなどがそうです。米国ではお金を送ることを「Venmoする」と言うほどに浸透しているそうですが、Venmoを利用する層は所得が高いエリート層（スーツ）が多く、CashAppは低所得者層が多いそうです。

その事実を裏付けるようにストリートカルチャーである音楽の歌詞の中には「CashApp」というコトバがめちゃくちゃでてくるみたいです。Venmoはスーツ野郎が使うやつ、おれたちのこと分かってるのはCashApp！的なノリですね。

参考：[Daily Topics]Cash Appの事例に見るカルチャーフィットの重要性

このような二項対立はCryptoの界隈でも起こっていて、これはUniswapとSushiswapもそうです。一方はベンチャーキャピタルの出資を受けており、もう一方はそうでない。スーツとコミュニティの戦いです。(SUSHIはVC入れる議論とかCTOのスキャンダルとかいろいろあって大変だけどね)

Openseaも母体がかなり大きくなってしまいましたが、元はコミュニティ側でした。コミュニティのFBを受けて中央集権の良い部分であるトップダウン型で開発を続け成功をしたわけでしすね。ですが、株式市場に上場しWeb2.0の呪縛から逃れられないのであれば振興のマケプレにいつか追いつかれてしまうのかもしれないですね。