#206 Substack
前回、FTX事件について取り扱ってからその後を書いていなかったので気持ちが悪く今日のメルマガは状況整理枠です。書籍の最終入稿も終わりメルマガの頻度もあげられると思います。
前回記事
解説ラジオ:ラジオで聞くならこちら
本日のサマリ
FTXのサム、逮捕。まぁそうなるかということで、FTX事件は1つの節目でしょうか。
FTX創業者、バハマで逮捕 仮想通貨の相場操縦に関与か(写真=AP)
FTX事件が大きすぎて、勢いでメルマガを書いてからすでに一月が経っており、その後を書かねば書かねばと思っていたのですが、書籍の最終入稿が迫っておりなかなか落ち着いて筆を取ることができていませんでした。
このメルマガで供養していきたいと思います。
とはいえ、一月分も日が経ってしまいましたので、事件詳細や時系列はすでにまとめられたものがネット上に溢れております。ここではそれらを掲載し、少しコメントを述べる程度とし、FTX事件おもしろかったポイントについて触れていきたいと思います。
FTX事件について
■ 本件に関して詳しい記事
概要を把握できる日経記事:仮想通貨「風雲児」の転落 FTX創業者、破綻後も迷走
時系列での出来事(英語):FTX collapse timeline: Six days that rocked the crypto industry
noobくんも時系列まとめてくれてる(日本語):2022/11/14 Noob Botter NewsLetter
Tx履歴まで載せた一番詳しい経緯:永久保存版FTX事件の記録
FTX事件を起こす前のサムとFTXについて:FTX事件について考えたこと
82tweetに及ぶ、解説スレッド:Adam Cochranのまとめスレッド(和訳)
金額感とお金の流れ
CZとサムのTwitterでのケンカから始まり、まさかこんな自体を引き起こしてしまうとは、誰が予想できただろうか。最終的な被害金額がでかすぎます。
破綻したFTXの出資額の合計は、約7,400億円
■ 代表的な投資先
マイニング企業Genesis Digital 11.5億ドル
Sequoia Capital 2億ドル
Voyager Digital 1.5億ドル
BAYCのYuga Labs 5,000万ドル
NEAR 8,000万ドル
Aptos 7,500万ドル
Polygon(MATIC)5,000万ドル
お金の流れはこちらでこちらで見ることができる。参
見てみるとわかるが、表が長すぎるので、これを見るだけでもFTXにより資金が拘束されている企業の多さや事件の規模を感じることができる。
事件の影響範囲
金額感がわかったところで、影響の範囲について見ていく。CoinGeckoのインフォグラフィックがわかりやすい。
FTXの事件はCrypto関連の多くの部門に影響を及ぼし、連鎖倒産を引き起こした。中でもレンディング事業者への影響は凄まじく、業界最大級のレンディング企業であったGenesis及びBlockFiは最悪の結末を迎えている。(筆者もくらっているので非常に腹立たしい)
Genesis
FTXに1億7,500万ドル以上の預入があったことを報告、顧客資産の出勤停止
5-10億ドルの緊急資金調達を開始
BlockFi
28日に破産申請
FTXに2億7,500万ドルの貸し出しを行なっており、FTXに3億5,500万ドル相当のデポジット及びAlameda Researchに対し6億7,100万ドルのローンがあったとのこと
SBF氏の持つ親会社 Emergent Fidelity Technologiesを告訴
FTX事件は我々同様、Twitterで知った模様(もはや、お笑いである)
仮想通貨交換事業者
CEX各社は資金の管理状況を示すProof of Reserveを公開
それらをCoinGeckoがまとめてくれている
VCなど
その他FTXに投資していたVCはFTX投資分のポートフォリオを0に書き換えています
FTX事件はCrypto業界に信用不安を引き起こし、コインマーケットキャップによると11月上旬から1カ月あまりで仮想通貨全体の時価総額は約2000億ドル分消失した。なんてことしてくれるんだ。
また、米交換業大手クラーケンは11月30日、全従業員の3割にあたる1100人程度を削減すると発表。冬の時代をさらなる極寒に突き落としてくれたサムのおかげで日本のCrypto事業者にも露頭に迷う人らが出てしまうかもしれない。
FTX事件の注目ポイント
さて、今日の本題である。
凄惨な事件の中でもキラッと輝く思わず突っ込まざるを得ないおもしろポイントについて触れていきたいと思う。FTX事件の被害は自分も受けている中で正直、茶化していかないとやっていられないのが本音だ。
SBF Go to PRISONトークンの販売
今日紹介したかったのはこれだ。前置きが長くなりすぎた。そして結果が出てしまった。
SBF GO TO PRISONトークンである
FTX事件によって、SBFがなかなか逮捕されない。
「よし!サムが逮捕されるか賭けよう!」
悪魔的センスと反骨心の持ち主である。タダでは転ばない感じがとてもよい。
このトークンを見た瞬間に爆笑した。
爆笑した理由には3つある。
まぁまずその発想と開発速度、FTXを煽るならこれだよな感、逮捕されないことへのアンチテーゼであることがある。
■ その発想と開発速度
「**SBF GO TO PRISON」**と聞いて、まず笑う。わろてしまう。
ページを見る。
意外としっかり作り込んであってまた笑ってしまう。この短時間でなに作ってんねん感がすごい。
スクロールをしていく。
SBF NEWSなるコンテンツがページ中段にあり、サムのTweetが転載されるようになっている。
注目すべきポイントはフォントだ。
いかにも逮捕前の追い詰められた弱々しい感じがよく表現されている。開発者が爆笑しながらこのフォントを選択したことがよく分かる。goodjobである。
そして、このサイトは最初は貧相であったところから時間が経つごとに完成度が高まっていきついには冒頭の動画まで追加されていた点、称賛に値する仕事ぶりであると思った。
■ FTXが得意とした手法であること
PRISONトークンのおもしろポイントはFTXが本来得意としていたことの意趣返しである点もおもしろさに拍車を掛けている。
FTXはそもそも、トークンを使ってTeslaの株を売買できる先物商品を勝手に作ったり、トランプVSバイデンの米国大統領選挙の勝ち負けを予想するトークンを発行していたりと、ネタトークンを作ってユーザーに遊びを提供することに長けていた。
トランプVSバイデントークンは、トランプとバイデンのトークンが2種類あり、買ったほうが1ドル、負けたほうが0ドルになるギャンブルトークンである。FTXは仮想通貨をトレードする場であるが、こういったこれまでトークン化されてこなかった商品をトークン化することでユーザーに遊びを提供していた。それが、FTXだった。
当時のお遊びTweetの例。
そして、そんな遊びを提供してくれるFTXが、
Cryptoのミーム文脈を理解してくれているFTXが、
みんな好きだった。(過去形)
■ BitMex Artherの前例
これだけの大事件を起こしたやつが逮捕されないなんて普通におかしくね?
米国に多額の寄付を収めていれば逮捕も免れるのか?という話も出ていたのでPRISONトークンはナチュラルな感情に訴えかける良いトークンだった。
のぶめいが好きなBitMexのArtherが逮捕されて、FTXのサムが逮捕されないなんて!と界隈の人間なら誰しも思うところにドンピシャで刺さっていた。
これらの理由から、PRISONトークンは二重三重の意味で芸術点が高くセンスがずば抜けていた。
事件当時はサイトを見るたびにデザインが新しくなっており、いまや動画まで追加される徹底ぶりでこれがCryptoだよなぁ感を感じる非常に良い事例である。
次は釈放されるまでの日数でも掛けられるのだろうか。おもしろトークンの登場が待たれる。
壊れたサムとCZの聖人ムーブ
この二人の動向は本当に対照的ですね。最初はCZが悪い方に見えたのですが、180度変わってしまいました。
■ サムの動き
事件前より落ち着きのない様子や、そういえばそうだった系の話題が掘れば掘るほどに発掘
事件後、謎の意味不明なTweetが散見、完全に壊れたか
社員に当てたポエムや機密文書が暴露されまくる
渦中の最中、以前より登壇が決まっていたNYタイムズのイベントに登壇
いや、でてんじゃねぇよ。のツッコミが世界中から巻き起こる
登壇中、落ち着きなく小刻みに揺れているとの証言あり、まともな精神状態ではないのではと憶測が広まる
パロ画像がたくさん作られる
FTX事件の映画化楽しみです
■ CZの聖人ムーブ
BinanceのProof of Reserveを事件後即時に公開
ETHのビタリック氏と取引所の資産証明規格を考案中と発表
FTXの経営破綻の余波で苦境に陥っている事業者を支援するため10億ドルを拠出
日本の仮想通貨交換業者を買収して、日本進出
「いまなの?」というツッコミと同時にBinance本国の日本人登録が停止されたのでFTXに続き有望な海外取引所が使えなくなる不安が界隈にあふれる
0から交換業の資格を取得するハードルは高いものの、交換業を持つ事業者を買収すればそれでokなバグはどうにかして欲しい。
FTXの件があるので、BinanceJPの資金管理体制については厳しい監査が向けられるでしょう
FTXと対称的に聖人ムーブを行うCZですが、対称であるがゆえになんかきな臭いですよね。
【余談】大坂なおみ、大谷選手揃って訴えられる
まぁそうなるのも、気持ちはわかるよ、案件。当人たちには判断しようのない話ですからね。
おもしろポイントはそんなところです。
では、FTX事件の総括として、CoinDeskのこちらの記事から引用させていただきます。
総括
暗号資産の役割を果たすために信頼をどう取り戻す?ポストFTX危機を考える【オピニオン】
FTXを信頼する
私たちは、FTXを信頼する必要はなかった。分散型の代替オプションがあったのだから。しかし、私たちはFTXを信頼することを選んだのだ。バランスシートについてもっとはっきりとした情報を求めることもできた。トークンの動きについて、もっと早くに分析することもできた。取締役になぜ投資家がいないのか尋ねることもできた。それなのに、それらのことをしなかったのだ。
多くの理由から、中央集権型企業を信頼するという、深く染みついた習慣に従ってしまったのだ。その理由とは、利便性、リターンの可能性、帰属意識、賢さや饒舌さへの直感的な尊敬、むさ苦しくて負け犬のような人(サム・バンクマン-フリード氏)を応援し、彼が成功するのを見ることから得られる高揚感、満足感などである。
これはおそらく、パターンから推測してしまった結果なのだろう。企業が大きく成功しているなら、合法でしっかりしたところなはずだと。これだけ多くの国や地域に事務所を構えているのなら、これだけ多くの分野で業界の成長を支えているのなら、創業者がこれだけ多くの有名でパワフルな友人を抱えているのなら、しっかりと検証されているのは間違いないだろう、と。
そこにたっぷりのイデオロギーを放り込めば、コンセプトの成功を強く望むあまり、良識による当たり前の抑止力が機能しなくなってしまうような、優しい仲間たちが集まる。
さらに、コンセプトの信奉者ではない人たちすらも引き込む、感情的な反射作用も存在する。金融を改革し、資産の大半を手放すことで世界をより良い場所にしてみせると、静かにかつ知的に語るオタクっぽい人間を好きにならない人などいるだろうか?
誰かを非難しようとしているわけではない。自戒を込めて言っているのだ。
この先は?
中央集権型プラットフォームを適切に精査することなんて私たちにはできそうにないのだから、そんなものを使うのはもう永久に控えたら良いのだろうか?現状では、そのような方針が魅力的に聞こえるし、分散型アプリケーションのレジリエンスと成長からは、力強い潜在性が伝わってくる。
しかし、私たちの多くは、次は危険信号をもっと良く検知できるだろうと確信し、安全性よりも利便性を直感的に選ぶ習慣に戻っていってしまうことは分かっている。結局のところ、利便性は効率性を生み、それが金銭的利益を生むのだ。そして人間は直感的に、快適さと協調の方に向かう傾向がある。
私たちはもっと良くできるはずだ。中央集権型プラットフォームは市場の重要な一部であるということを認めつつ、今回の騒動から学び、信頼を盲目的な信用に基づかないものにするツールを開発するのだ。
このような動きはすでに始まっている。例えば、複数のプラットフォームが、「プルーフ・オブ・リザーブ」を導入すると発表した。これは、プラットフォームの保有資産が、顧客の預け入れ資産に匹敵、あるいはそれを超えるものであることをユーザーが独立で検証できるようにする、暗号化技術と伝統的な監査の組み合わせである。
これから数週間で気まずい説明を迫られるものも含め、ベンチャーキャピタリストたちは将来的に、少なくとも次のブームが来るまでは、もっと厳格なデューデリジェンスを行うだろう。
ロビー団体や政策チームは規制当局と協力して、早まった制限や破滅的な定義の導入を回避しつつ、情報開示ルールの草案を作っていくだろう。機関投資家は、過激なイノベーションからは距離を置きつつも、馴染みがあるように見えて、より良いリターンをもたらすような新しい仕組みの支援は続けるはずだ。
そして業界は、世界のどこでも個人に優れた選択肢を提供するという、クリプトの根本的信条を示すようなもっとパワフルなプロダクトやサービスの開発を続けるだろう。分散型サービスを使いたい人は、使えるようにするべきだ。中央集権型サービスの利便性を好む人は、信頼できるサービスを受けられて当然だ。
希望的観測のように聞こえるかもしれないが、人間の本質が、その最も得意とする仕事をしてくれると信じている。それはつまり、保護の一般的必要性に対して集団的なソリューションを見つけつつ、周縁的な集団に対するニッチなソリューションもサポートするということ。
歴史を通じて、非主流派の理想主義者たちこそが、変革を通じて成功を遂げてきた革新家たちなのであり、彼らのアイディアが、既存システムよりも優れた効率性やエンパワメントを届けてきたのだ。
私たちはまた、信頼をするだろう。信頼するべきなのだ。信頼は私たちの在り方の一部であるし、価値を生み出すコミュニティに必要な要素でもある。しかし、信頼というコンセプトをよりよく理解しなければならない。なぜ信頼するのかというのを理解することは、私たちの近視眼的な考え方が生む脆弱性を抑えつつ、必要なことを成し遂げるシステムをデザインするのに欠かせない条件なのだ。
今回のFTX騒動は、痛みと怒りを残した。この業界において2度とこのようなことが起こらないようにすること、同時になぜこのようなことが起こったのかを理解することは、私たちの責任である。立ち上がって、苦しんでいる人たちを支え、先へ進み続けるのも私たちの責務だ。
そのプロセスには、中央集権化は、私たちが望む分散型システムにとって必要だが、慎重に組み立てられる必要のある要素であると認めることも含まれる。
テクノロジーの助けを借り、ずっと優れたメッセージを送り届けることで、この業界を多様な力としている人々の本質を変えることなく、目標を達成することができると信じることも、この先に進む上で大切な要素となるだろう。
いかがでしたでしょうか。
現状を認めつつ、前進しなければならないと繰り返し説いているとてもよいコラムだと思います。それっぽく自分の言葉に変えて伝えることもできますが、原文が良すぎるので引用いたしました。
未来に悲観することなく、ミームでケタケタ笑いながら前進し続けましょう。
本日は以上です。
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