FTXがBinanceに買収されるってマ?
前回記事:
解説ラジオ:ラジオで聞くならこちら
朝起きたら、Binance vs FTXがBinance = FTXになっていました。
完全に頭がポルナレフになったので今回は状況を整理する会です
なにが起こったか
仮想通貨メディアのCoinDeskがFTXと関係の深いAlamedaのハイリスクポジションがすっぱ抜かれました。
訳文)
Sam Bankman-Friedの暗号帝国の分裂が、彼の取引の巨人Alamedaのバランスシートに影を落とす
コインデスクが確認したプライベート文書によると、アラメダの6月30日時点の資産総額は146億ドルで、その大半はFTXが発行したFTTトークン。
Divisions in Sam Bankman-Fried's Crypto Empire Blur on His Trading Titan Alameda's Balance Sheet
記事の要点としては、「Alamedaがやばいよ」という内容になっており、その理由は資産の大半がFTXが発行するFTTで保有しており、それを担保に更に資金を借りてレバレッジを掛けたハイリスクポジションを取っていた、というものになります。
AlamedaはFTXと関係ない風を装っていますが、実態はFTXの投資部門であり界隈では周知の事実です。そのAlamedaの資産状況が自社が自ら発行するトークンで占められている状況はそのトークンの暴落によって死ぬリスクがあるのでまぁやばいよねーという話です。
このリスクを競合であるBinanceのCZ氏視点から見ると、「競合を叩き潰すチャンスやん」となるので、「Binanceが持ってる大量のFTT売る」アピールをTwitter上で行うことで、信用不安を引き起こすことができます。
事実、BinanceはFTXに投資していた過去があり、大量のFTTをBinanceは保有しています。このFTTが一気に売り圧として市場に投入されればFTT価格が下がることは明白であり、FTT保有者は一時でも早くFTTを売却しようとするため、FTTの暴落騒ぎを引き起こすこととなります。
こうなってしまうと、きっかけとなったCoinDeskの記事が本当であるかは問題ではありません。Terraの暴落のときのように、不安がパニックを呼び、FTTの大暴落を引き落としました。
事実、FTTの時価総額は大幅下落となっています。(一番右の崖が今回の事件)
FTTが暴落したことにより、ハイレバポジションを持っていたAlamedaは破産待ったなしの状況です。FTTが暴落すると、FTTを発行しているFTXもやばいことになります。
FTTの暴落で担保の価値が減るので貸し手返還請求に答えられない
手持ちの資産を売却することになるが、市場は冷え切っておりお金が集められない
お金を返せない → 破産が見えてくる
最悪、倒産してしまうリスクがあるため、取り付け騒ぎが発生します。
銀行が倒産するときに自分の預金を引き出そうとする人が窓口に溢れますが、まさにあれです
このような順序でFTXが資金難に陥ってしまい、事を仕掛けてきたBinanceに泣きを入れる展開になっています。買収される(かもしれない、しかも噂によると1$で)という話もあり、この出来事が寝て置きたら起こっていたので頭がめちゃくちゃに混乱しました。
方程式で書くとこうなりますね。
Binance vs FTX → Binance = FTX
Terraのときもあの会社が?!といった驚きはありましたが、DeFiが発端となった事件なので一般ユーザーからすると震源地はやや遠めで、古参Crypto勢がやばいやばいとキャッキャしていた印象があります。
その点、今回は一般ユーザーも利用する取引所同士が引き起こした事件ということで震源地も近く、今後の規制などにも響いてきそうなので、より一層大きなインパクトを持って受け入れられることになるでしょう。
事の重大さを理解するための前提知識
そもそも論ですが、Binanceは仮想通貨取引量がグローバルNo.1企業、FTXはNo.2企業です。
今回の事件はNo.1がNo.2の買収騒ぎなのでその影響力はマジ半端ないです
数日前まではFTXは2位だった(いまはもう違う)
BinanceとFTXの関係性
元々2社はBinanceがFTXに出資している関係でした。
その後、FTXが急成長したことによりFTX株をBinanceから買い戻した経緯があります。その売却の際にBinanceはFTTを$2B分もらっています。
以後、BinanceがFTTを保有する形で、FTXとBinanceは互いの覇権を掛けて市場で争っていくこととなります。Binanceが中国系、FTXが米国系なのでうまいこと棲み分けできていた、はずだった。
No.2がNo.1を目指すのは必然です。FTXがBinanceを越えようと頑張り驚異的な成長率を叩き出していました。FTXのSBF(通称アフロ)はBinanceを超えるためには世界最大のマーケットを持つ米国の規制当局を巻き込む必要があると考えており、この動きは中国系のBinanceには打ちにくい一手です。事実、アフロは米国大統領のバイデン陣営に多額の寄付をしており、ロビイング活動に積極的でした。
台湾事変などを通して、米国と中国の国同士の軋轢が深まるとともに、Crypto市場からBinanceを排除して、米国の影響力を強めようとするポジションをFTXが確保し、規制に準拠しないBinanceを攻撃する体制を整えつつありました。
その過程でアフロはCrypto規制に関する提案を規制案を提出しており、界隈からは強い反発を持って受け入れられ「裏切り者」扱いされ、Cryptoの敵認定されてしまったタイミングでした。
今回の事件は、Binanceを攻撃しようとするFTXが体制を整える前にBinanceからのカウンターパンチを喰らった形となり、BinanceのCZからも「ロビイング活動でBinanceの悪口を言うやつは絶対にコロス」発言がTwitter上で発言されています。
このあたりの話は、souさんのスレッドで紹介されているものが非常にわかりやすいです。謝謝。
CZとSBFって?
左がCZで右がSBF、サムとかアフロとかの愛称で界隈では親しまれている。みんなどっちも好き(たぶん
アフロの本名はSam Bankman-Fried、元トレーダー、使いやすい取引所内からおれが作るわ。ってことでマジでFTXを作った。アフロなので毛量は多め。
アフロの人生は最高にCryptoしてるやつだと思います。
CZはジャオ・チャンポンって名前。CZって書くとかっこいいけど、チャンポンって聞くと可愛いですよね。アフロじゃないので毛量は少なめです。
今回の事件で、Cryptoは髪の毛が少ないほうが強いことが証明されています。もしかしてこれは、SBFのFTXをSB(ソフトバンク)が買う布石なんでしょうか?運命感じますね。
起こった出来事(時系列順)
ビットコイナー反省会が超タイムリーに時系列順で出来事を解説してくれているので非常に助かります。謝謝。いくつか引用させてもらいます。
■ 時系列順の出来事
11月2日:CoinDeskの告発記事が出る
11月7日:CZ「FTT売ったろかな(実質、FTX潰す」発言
SBFがロビー活動にBinanceの悪口を言っていると主張
この投稿によりSBFとCZがTwitter上でレスバトルのゴングが鳴る
「我々は、以前は彼らを支援したが、離婚してからも愛し合うふりをするつもりはない。他の業界関係者を敵に回してロビー活動をするような人々を支援しない」 (実際に出金処理などもされており、事の信憑性が高すぎた)
救世主としてAlamedaのCEOが「FTTはウチが22ドルでこうたるで!」と登場
SBFも大丈夫や、安心せえと主張(該当ツイートはツイ消し)
FTX公式もネタ画像を投稿する程度には余裕発言 (お金の中泳いでるから大丈夫的なアメリカンなジョークだよ)
その後、音沙汰がなく、Terraショックを再起してしまう市場心理からFTT暴落
FTXが資金難に
FTX自体はSequoiaから$420M、Paradigmから$400M出資されており、直近の時価総額では$32Bの評価を受けており、その金額が一瞬で無くなるの?という破滅的な驚き
FTXからの出金が停止、Binanceの軍門に降る
CZ「FTXが危機的状況になっていたので、我々が救うために買収する」発言(おまいう?)
FTXがBinanceに敗北宣言
買収の合意書はBinance側で検討の上判断、買収されない可能性も全然ありえる
レスバトルの感想としては、「いや、Twitter上でやんなよ」って思いました。
FTXがBinanceに泣きついたことから、以下事実が推測されます。
Terraショックでダメージを受けたAlamedaがFTTを担保にFTXに借りた説
FTXが預金の焦げ付きを経験し、顧客のすべての引き出し要求を満たすことができない
なにが問題なのか?
自社トークン自分でPumpすな
FTXとAlamedaが一体となって、FTTのパンプによりバランスシートを膨らませていったのではないかという観測が出ています
FTXはSolanaが発行するSOLにも関わっており、自分たちが流動性を提供することを価値としてトークンの価格をパンプさせて、VCもその流れに便乗して市場から資金を集めまくるスキームが流行りました。
最近話題でVCが入り込みまくっているSuiやAptosも似たようなもので、技術的な差異や思想の違いはあれど過去事例の焼きましを繰り返しているだけのように自分は感じており全く投資しようと思いません。
この行為自体がすべて悪ではなく、必要なところに資金を調達させる旨味はあると思うのですが、実態が伴っていないハイプ(期待)で価格が上がりすぎてしまい結局盛り下がったときに損をするのはあとから参加する個人投資家でありVCやFounderが売り抜けている状況は好ましくなく、焼畑農業を繰り返しているのに近い印象があります。
今回のFTXの1件を見て、背筋がヒヤッとしている他プロジェクトは山ほどあるんじゃないでしょうか。
産業のバランスが崩れた
Binance vs FTXの対立構造は、バックに中国 vs 米国を抱える代理戦争であった側面もあります。
今回の件で、FTXがBinanceの軍門に降ったことで世界の仮想通貨取引の大部分をBinanceが扱う可能性があり、帝国が誕生する可能性があります
帝国が誕生してしまった場合、FATFなどの世界的な規制を取り仕切っているのは米国になるので、米国に利益をもたらさないCryptoへの規制を強めにくる可能性が高まります。そうなった場合、我々はレジスタンスなので抑圧されるのみです。
帝国兵士にでもなりますか?
中央集権の脆弱性やばない?
5月のTerraショック、それに付随する3ACショックに続き、FTXショックとなりましたが、これらの事件はすべてCryptoを扱う中央集権的な組織が引き起こしているものです。
また、その事件を引き起こした組織の中で働いている方々は金融のプロ(っぽいキャリア)でありCryptoを触るのであればこの辺はまぁ大丈夫、ぐらいの感覚で捉えられていました。特にFTXなどは最近日本での活動を本格化させており、UIの使いやすさで考えても、手数料などの経済合理性で考えてもおすすめできる取引所No.1でした。
コインチェックのアフィを貼った悪質なコピペメディアはすべてFTXアフィに張り替えた方が誠実であると自分も考えていたところに起こった事件であるだけに、他人に自らの資産を委ねることの難しさを感じますね。資産のポートフォリオ管理大事です。
こういった事件が起こるたびに、非中央集権の重要さ、Bitcoinの素晴らしさを再確認する次第です。
大谷元気か?
FTXって大谷選手が広告塔になってるんですよね。大丈夫かこれ?
ちなみに、日本の取引所周りの規制はガチガチで世界一厳しいので、FTXに資産を預けていた方の資産は出金できないだけで安全な可能性が高いです。
とはいえ、出金できない状態が続くと、金融庁案件となり是正勧告が出されることになると思います。FTX JPのアナウンスでは本国都合で出金できないとされているのですが、FTX JPの権限で出金できることを証明できないと、業界団体作って大仰な審査してる意味ないですよね。
これで日本人の資産戻ってこなかったら審査した方々はお金補填してくれるんか?絶対ムリなんですから審査なんてやめてしまうべきです。
今後どうなるのか?
最近ニュースもなかったので、そろそろ底を打ったかなと思っていたのですが、まだまだ冬は続きそうです。Alamedaが高い流動性を提供してくれていたバックボーンがあってこそFTXが強かった面があるので、FTXの価値はかなり減衰してしまっていることは間違いなく、今後の市場にも大きな影響を残ることになるでしょう。
買収しますという話でしたが、このメルマガを書いている最中にもCoinDeskからFTXの買収やめよっかなーという話も出てきており、また寝て置きたら状況が変わっている可能性がある余談を許さない状況です。
買収されない判断がされず、他に救済がない場合、Mt.GOXと同じような状況になります。その場合の資金回収には多大な時間がかかるでしょう。
しばらく、おとなしくしている方が吉。という市場が続きそうですね。
と、思っていたらCZから続報が来ていました。中身は
アフロから電話が来て24時間で事が決まってしまった
BinanceのFTT売却は一旦ストップしてFTXのDDに入る
Binance社員は絶対にFTTを取引しないでくれ、公の発言も禁止(インサイダー対策)
FTXが潰れるのは業界にとって悪いことだ、今回の件はBinanceの勝利ではない
ユーザーからの信頼はゆらぎ、規制は厳しくなり風当たりは厳しくなる
短期的な価格は無視し、オープンで安全な良いサービスを作ろう
いやいや、いいやつかよ!
本日は以上です。
まぁ、今回の件は大きい事件でしたが、早くこうなってほしいです。
今回の件での教訓
レバレッジ取引はプロ中のプロでも簡単に死ぬ
Don't trust, verifyがCEXには通用しない、レバレッジを掛けていたとしても知るすべがない
自社が自ら発行するトークンに資産状況が偏っていると弾け飛ぶリスクがある
BTCは素晴らしい
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