#186 Substack
完全に機は逃してしまったが、このメルマガの特性上取り上げざるを得なかった。再生数稼ぎのためにやり玉にあげてしまって申し訳ないと思っている
前回記事:[Daily Topics]Web3.0メディアに潜む人間の心の脆弱性
解説ラジオ:ラジオで聞くならこちら(久しぶりにとったのでもうすぐ更新するよ)
English ver:英語訳してくれていた方が電通に転職されてしまいました。つまり、このメルマガを英訳していると電通にい行けるってことです。Help Needed!!
This newsletter is now being translated into English on the same day. I'm really grateful for the instant translation !
本日のメイントピック
電通プライベートチェーンの担当者を救いたい。
先日、こんなリリースがありました。
日本発のイーサリアム互換チェーンを公開──電通、みんなの銀行、ピクシブが参画
EVM互換!ほうほうAstarを見習ってイケてるL1を国内で作ろうと頑張っているのかなと思いきやよくあるプライベート・ブロックチェーンだった様で、界隈からの不評を買っています。
パブリックとプライベートの違いとは?
一応、おさらいです。ブロックチェーンにはパブリック型とプライベート型の2種類があります。
BitcoinやEthereumのようなブロックチェーンはネットワークに参加して利用するのに許可はいらないのでパーミッションレス=パブリック型、参加に許可がいるものはパーミッション=プライベート型と呼ばれます。
一般的に、企業が扱う情報をパブリックに載せてしまうと財務情報や資産などが誰からも見える状態になってしまうのでプライベート型が選択されがちなのですが、1社で管理するならAWSのDBで良くない?とよく話題になっています。
コンソーシアム型はブライベート型の発展型で管理する主体が2社以上になった形を指します。管理する主体が増え、分散すれば強そうな気がするのですが、パブリックに比べて圧倒的に分散の度合いが低いため、それだったらパブリックでよくね?となるのが世の常です。
プライベートやコンソーシアムブロックチェーンを採用する案件に対しては、「Why? Blockchain」略してワイブロ、なんでブロックチェーンを使う必要があるの?と疑問が投げかけられてきました。
この辺りの話はこちらで詳しく解説しています。
[Daily Topics]マーケットプレイスはパブリックかプライベートどちらであるべきか
[Daily Topics]なぜ日本のNFTマーケットプレイスがYoutuberの電子うんこを垂れ流さざるを得ないのか、その理由を徹底解説
[Daily Topicsブロックチェーンを国家戦略にしたらあかん!という話](https://www.notion.so/Daily-Topics-e8dd8304701149f3a70826b5a2432036)
プライベートが絶対的に悪いとかいう話ではありません。これは濃度の話です。実現したいことがあって、適切な技術選定をすれば良い話であり、「電通」だから不評であるというものではなく、「楽天」がプライベート型のマケプレを発表したときも同様の批判が巻き起こりました。
ドキュメントで気になった部分
楽天マケプレが登場したときにも「はぁ、またプライベートか」という反応はあったのですが、今回の電通チェーンはドキュメントがしっかり用意されているがゆえに突っ込みが多々はいっています。
ドキュメント:https://www.japanopenchain.org/docs/faq
分散に対する考え方の違い
ブロックチェーンには有名なトリレンマの課題があります。分散性、スケーラビリティ、セキュリティの3つの課題があった時に、2つは取れるが1つが犠牲になってしまう関係性の事を指す課題です。
プライベートは分散性を犠牲にすることでスケーラブル、かつ、セキュアなブロックチェーンを実現しようとするものです。トリレンマの課題などについてはこちらで説明しています。
詳細:[Daily Topics]Web3.0のインターネット基盤になっていくEthereum
ドキュメントで気になるのはこの一文です。
また、本チェーンではノード運営者を信頼できる日本の組織に限ることで、必要十分な分散性と実用性、法的安全性を兼ね備えたパブリック・ブロックチェーンとなります。
「信頼のできる日本の組織」かどうかを判定するのは誰なんでしょうか。100%悪用されないことを信頼して自分の個人情報をすべて渡せる会社が何社あるでしょうか。少なくとも私はありません。
大抵の会社、特に大きなところであればあるほどに「会社名+流出」などで検索すれば前例は出きますし、清廉潔白ではいられません。選定基準も公開されていないので「おれの友達だから大丈夫」程度の安心感しかありません。
もし何か事件が起こった時に責任までもが分散されていないことを願うばかりです。これに関する界隈の有識者方のコメントをちょいちょい挟むことで大手広告代理店を批判する責任を私も分散化していきたいと思います。
こういった一文もありました。Bitcoinが51%攻撃を受ける可能性と参加企業がハッキングを受ける可能性は遥かに後者の方が高いんじゃない?って思います。
特に PoW や PoS を採用したネットワークにおいては、51%Attack と呼ばれる 51%のパワーを一つのコミュニティが持ってしまった際にハッキングされる恐れがあり、十分に注意が必要です。
また、ブロックチェーンのノードを日本だけに限る行為は、地政学的にもリスクがありますのでそのようなブロックチェーンを使おうというプロジェクトは少ないでしょう。
ブロックチェーンを使うと言うのではなく、複数社共通のDMPや情報銀行を立ち上げましたリリースであれば納得する内容です。
なぜ「分散化」が重要かの思想が欠けている
EthereumのRollupの技術に関するQA部分にて、おれたちの技術はすごいんだぞPRがすごいのですが、「それみんな言ってないだけだからね」案件です。
ブロックチェーンの技術面しか見ていないとよくこういった視点に陥りがちです。
DBの技術で実現できていたことをどうやったら「分散型」で実現できるかを世界中の人間が検討している理由を考えるべきではないでしょうか。
思想のない技術はただのロボットです。最大効率を求めて最適化された結果、映画「スノーデン」のような世界になってしまったことを忘れてはいけません。プライベート化が進んだ未来はWeb2.0の焼き増しの世界を見せられるだけになるでしょう。
ドキュメントの書き方にリスペクトが無いようにみえるので、みんな怒ってました。謝るならお早めに。
スマコンよりも法律を重視している
プライベートが選択される理由は法律の準拠、ファイナリティの欠如、高いGas手数料などパブリック型にはない特性を持つ、などの理由がよくあるパターンです。ドキュメント内でも仕切りに法的な面が記述されていました。
これは利用用途の問題なので一概に間違っているとは言えませんが、Web3.0では法律よりもスマコンの方が概念としては上位レイヤーとして考える考え方があります。
これまでのプログラムはスマコン化されていなかったので企業がルールを決められる「企業が法」状態だったのですが、企業は法によって罰せられるので、概念としては企業よりも法が上です。ですが、スマコンは改ざん不可能です。取引内容に問題があり法律が罰しようとしても取引に介入することができません。こういったことから、Web3.0の世界では法律よりもスマコンの方が重いと考える事もできます。
スマコンに記述された内容は改ざん不能になるので、「Code is Low」とも呼ばれます。プログラムコードが法であるという意味です。
こういった一文もあり、そもそも以下のようなリスクを避けるための技術であることを世界中の人間が再認識したばかりなのではないでしょうか。
さらに経済制裁などで特定国への資産送金が禁止されるような状況においては、オープン・ノード・サーバ型チェーンでは対処が難しく、そのチェーンの上で金融商品をつくることは将来法律面、事務面において大きなリスクを負う可能性が高いです。
余談ですが、常にリーガルハックしている方からのコメントは重みがありますね。
じゃあどうすべきなの?的な話
やっと本題にやってくることができました。いろいろと否定的なことばかり書いてしまいましたが、先日までnobumeiも代理店にいたのでこういったリリースが出てしまう内部事情は非常によく分かるのですよ。もう心が痛いです。
界隈は狭いのでそれ以外のところで効果が出ていればそれでいいのですが、界隈の反応を見ても、今回の発表は「イケてない」リリースだったと思います。誠に失礼かとは思うのですが、こうやったら良かったのに論を勝手に考えてみます。
利用用途を書くべきだった
プライベート型ブロックチェーンを採用する場合はこれが必要かなと思います。利用用途もなく、「プライベートでこれからガンバリマス!」は2年前に流行ったムーブです。
載ってくるコンテンツややりたいことがプライベートを選定するに足る内容であれば誰もそれを叩くことはないでしょう。ドキュメントがしっかり用意されているところを見るに、そうではないはずなので、具体的な利用用途を書いていれば誤解を招かずにすみます。
Web3.0急進派は細かいところまでチェックしすぎというのもありますが、「電通」という大きなカンバンを掲げられると監査の目も多くなります。
将来的に生き残れると本気で思ってる?
パブリックとプライベートの大きな違いはネットワーク効果の大きさです。
コンソーシアムに参加する企業が増えればネットワーク効果も大きくなりますが、パブリック型は誰でも簡単に参入できトークンによるインセンティブを持つので開発に使えるリソースがまるで違います。
AWSのようなクラウドが流行り始めたときにも日本のIT大手がプライベートクラウドといった商品を提供していたらしいですが、いまそれらのサービスは消え去っています。
日本ではしばらくブライベートが流行るでしょうが、数年後パブリックで成長しUXが研ぎ澄まされたサービスが日本に入ってきた時に生き残れるでしょうか。歴史を鑑みるにWeb2.0のサービスと同じことが起こるだけです。
プライベートの場合、ブロックチェーンって言わないほうが良い場合もあります。
でも「ブロックチェーン」言いたいのも分かります。ただのデータ活用文脈は代理店の中でやり尽くされてしまい何をやっても新規性がないので、ブロックチェーン文脈で体外発表をしたいですよね。
でも、その技術が将来生き残らないのであれば、それはキャリアには換算されないのが辛いところです。
短期的な実績を求めたい気持ちは分かるのですが、会社の組織は数年後残っているかはわかりません。nobumeiの上長は3度ラグプルされました。組織の中に貢献を記録するよりも、人やパブリックブロックチェーンにキャリアを刻んだ方がおしゃれです。
いずれトークングラフ採用が始まると思います。
参考:[Daily Topics]WAGUMIGOTCHIのLOVEに代わるTOKUを積みたい
Web3.0の話は複数者から話を聞く
代理店から出るフワッとしたリリースでよくある形としては、「コンテンツ系の会社複数社+開発会社1社」のパターンです。この場合、コンテンツ系や代理店の人間が技術に詳しくないため開発会社のいいなりとなります。
大抵の場合、担当者どうしの仲が良くポンポン話が進み広報担当者も技術に詳しくないので社内審査はあってないがごとく進んでいきます。これは本件がそうだというわけではなく代理店から出るリリースってこういうのが多いって傾向の話です。
また、nobumeiが大嫌いなのが開発会社の未上場株を握らされているパターンです。大企業に務める人間って頭が良くて上になればなるほど仕事にも慣れて身体的、金銭的両面で余裕が持てるようになります。
そうすると投資などに興味を持ち始め、株にも手を出すのですが、ここで出てくるのがスタートアップと自社でリリースやプロジェクトを仕立てて会社のValueを上げに行くムーブをかます社員が出てきてしまいます。
副業禁止、年功序列、仕事も暇となるともう自分でプロジェクトを立ち上げて仕事を作り、もらった株の価値をあげていくインセンティブが揃ってしまいますね。
社内で技術系のリリースが上がってきた際には、複数者からの情報収集を行い様々な切り口から判断することをオススメいたします。
全体の広報戦略としてやらないことを決める
大手代理店は日本中のクライアントを抱えて仕事をしており、それに対応する社員の数も膨大です。クライアントからNFTの相談が雑に入り、担当者が独自に調べて対応するようなことが日常茶飯事に起こっています。
一見中身のないリリースが出してしまう背景としては、増加するクライアントからの相談に対して、**「おれたちNFTできますよ!」**をアピールするためのある種のファイティングポーズとなっているのです。
このような形でリリースが量産されるため、会社としては最近話題のNFTやWeb3.0に取り組んでいきたいなんとなくの意志はあるけれども、体は違う方向に動き出しているといったことが起こります。マジで何の連絡もなくリリース出るので止めようがありません。
特にプライベート系の話が自社から出てしまうと、Web3.0の本流を真面目にやろうとしているマジメな社員のモチベーションを著しく下げることになります。もうさげぽよですよ。良いプロジェクトがその後ローンチされたとしても自社に冷水を掛けられるってどんな気分なんでしょう。
適当に情報を出していては、「お寒い奴ら」のレッテルを貼られてしまいます。情報を収集しても判断基準がなければ決断することができませんので、やらないことを決める必要があるでしょう。例えば、こんな感じでしょうか。
ブライベートはやらない
Web2.0な中抜きはせず、できるだけ開示、貢献に対する適切な報酬をもらう
コンテンツの切り売りとなるような安直なNFT化をしない
担当者を孤独にするな
正解がわからない不確実な状況において、なんかやれと上からは言われディスカッションできる相手は開発会社のみ。これでは嵌め込まれるリスクも高まるのも当然です。
多少燃えたからと言って、「お前燃えてんな」とか言ってくるやつにはグーパンで良い。
Cryptoは学べば学ぶほどに社会との距離が開いていき、金銭的にはリッチになっていくが心がプアになっていく闇の深い領域です。Cryptoは学べば学ぶほどに楽しく、始めると止まらない領域なので、担当者が社会を諦め組織から離れないようにするためには周りが距離を詰めるしかありません。
個々人の努力に任せるのだけではなく、会社としてWeb3.0に向き合う姿勢を見せなければWeb3.0人材は会社から射出されMOOOONしてしまうのみです。
ご連絡
Gitcoin Grant出してます
のぶめいはGitcoin Grantに2つプロジェクトを提出しています。
■ のぶめいのメルマガのGrant https://gitcoin.co/grants/3422/nobumei-newsletter
■ 広告枠のマーケットGrant https://gitcoin.co/grants/3614/kaleido-decentralized-ad
のぶめいラジオ始めました
このメルマガの内容を解説するラジオを始めました。テキストよりラジオのほうが情報に接しやすい方もいらっしゃるでしょう、ということでメルマガの内容をのぶがめいに説明する形でやっています。stand.fmってアプリでやってましたが、サービスがWeb2すぎるのでPodcastに変更しました。模索中です。
stand.fm:https://stand.fm/channels/616990bdafa93b18fc46b1cd
Podcast:https://anchor.fm/nobumei/episodes/2021NFT-e1c611j
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■はるか先生の週間NFTニュース
@はるか先生が書いているこちらを読んでおけばNFT関連ニュースはカバーできるのでオススメ