#106 Substack
今週は休みが多くて嬉しいですね。リサーチも捗ります。
This newsletter is now being translated into English on the same day. I'm really grateful for the instant translation ! Yesterday's article:The difference between e-garbage and expensive NFTs is a community
規制検討が進むDeFi領域、今後どうなっていくのか
[Daily Topics]SECが暴走気味?!Coinbaseの事例から分かる、Cryptoに迫る規制の流れ
暗号資産規制緩和に慎重姿勢、DeFi規制検討も、金融庁中島長官がメディア取材で | あたらしい経済
ニュースをいくつか並べましたが、ここ最近SECや金融庁からのDeFiに対する規制の話が度々出てきます。主体がいない分散型の金融に対し、イノベーションを阻害せず消費者を保護することはかなり難しいと思われ、様々な機関で規制については検討されていますが、SECのようなやや権力を振りかざすような対応になってしまいがちです。
そのへんに対して、以前はこんな記事も書いたことがありますが、金融庁の分散型金融研究会にも参加されているジョージタウン大学の松尾先生の資料が非常に勉強になったので共有したいと思います。
[Daily Topics]DeFiを規制することは国益を損なう愚行, 気づけよ国政
今日はこちらを見ていきます。
そもそも規制の目的とは
「規制」と聞くと一般人からすると自由を奪われる感覚になるので忌避しがちですが、マイナスの面ばかりではありません。
金融当局の規制目標は「金融の安定稼働」「消費者保護」「金融犯罪の防止」の3点でとてもシンプルです。これらを守るために規制当局は存在しています。一般の消費者からすると、我々に有利なルールを引いてくれる味方に近い存在と言えるでしょう。
規制当局はそのような側面を持つため、暗号通貨やDeFiといった規制当局が預かり知らぬところで大量のお金が動いたり自国の国民の資金が吸い上げられるような仕組みを規制しなければなりません。問題が起こる前は「検討会」のような形でゆるゆると議論をすすめることができますが、一度コインチェックのような「事故」に繋がってしまうと国家権力を使って強制的に規制を敷き、穴の空いたバケツを閉じにいかなければなりません。
CoinCheckの仮想通貨不正流出、過去最大580億円GOX: 日本経済新聞
先日のPoly Networkの670億円流出事件は日本人があまり巻き込まれていないのか、日本では騒ぎになってはいませんが、この事件のようなことが頻発するようであれば国際的にDeFiになんらかの規制を敷くことも考えられます。
[Daily Topics]クロスチェーンPFのPoly Network, DeFi史上最大670億円のハッキング被害に、レスバトルの末無事奪還
そうなってしまうとDeFiのイノベーションの芽が潰されてしまうので、そうなる前に規制を敷こうとしているのが「検討会」の役割です。
分散型金融DeFiと言ってもその粒度は様々
「分散型」金融と言っても、その分散具合はマチマチでほぼ中央集権やないかい!というものも多々あります。中にはマーケティングワードとして「DeFi」を謳っているBSCのようなものもあるため、分散度合いを正しく把握し何に対して規制を掛けるべきなのかを見極める必要があります。
実際、米SEC委員長のゲンスラー氏からはDeFiは分散型の皮を被った中央集権も多いと指摘されており、なんちゃってDeFiの構造はバレています。
DeFiという言葉は少し誤ったものである。なぜならば、オープンソースのソフトウエアのようなソフトウエアを書くだけでなく、ガバナンスに関する権利や手数料などを得るコアグループがいるからだ。この中には、後援者やスポンサーのための、幾らかのインセンティブ構造も存在する。
この点で、「分散技術の研究者」なのか「分散技術を使った営利団体」なのかを見極め前者は生かし、後者はやりすぎない程度のルールメイキングが必要になります。
また、分散のコトバはDeFiサービスの様々なレイヤーにまたがって掛かっているコトバなのでそこを分解する必要があります。
意思決定 :ガバナンストークンによる投票などステークホルダーを増やすことでの「分散化」
リスクテイク:24時間365日稼働し続けるシステムを動かすプロトコルとしての「分散化」
記録の分散化:誰かが意図的にデータを改ざんしてしまわないための分散台帳としての「分散化」
https://www.fsa.go.jp/singi/digital/siryou/20210915/sankou1.pdf
直近では、ガバナンストークン保有者による投票で可決されてにも関わらず、運営がそれを拒否した事例などもありこういったものは真の分散化された組織とは言えず、中央集権的な運営がいるのでそこが単一障害点となり規制の対象となります
token保有者のガバナンスで可決したのに運営が拒否した自称DAO「DAOだお」事件
DeFiサービスと規制のレイヤー
DeFiの分散化度合いについて説明しましたが、グローバルにまたがるDeFiサービスに対して誰が規制するのかという問題もあります。
こちらの図を御覧ください。グローバルレベルで見た時にレイヤーは3つに整理することができます。
https://www.fsa.go.jp/singi/digital/siryou/20210915/sankou1.pdf
グローバル:地球に1つ共通の営みで、国家の都合とは独立に存在する
これに対する規制当局:存在しない、規制当局とのコミュニケーションが不足
インターナショナル:各国家の事情に基づき、国家間の事情を調和させるための営み
これに対する規制当局:FATF、
ナショナル:国別の事情により、それぞれのガバナンスによって形作られる営み
これに対する規制当局:SEC,金融庁
この図の整理は非常にわかりやすいので、本当に秀逸だと思います。
このステークホルダー間で現在の問題と構造を話し合い、規制を敷いていくのが正しいやり方になりますが、グローバルレイヤーで分散金融に規制を敷くことのできる機関は存在しておらず、このままではコミュニケーションが不足しイノベーションの芽を潰すような規制を敷いてしまう可能性があります。
そのために、BGINという議論の場が設けられています。
BGINの概要とやっていること
BGINはBlockchain Governance Initiative Networkの略称で、ブロックチェーンコミュニティの持続的な発展を達成するため、共通理解の醸成と課題への対処のための協力を目的とした、全てのステークホルダーのための公開で中立な場、とされています。
BGINでの総会は年3回、部会は隔週で行われており、その特徴としては文書や議論内容は議論中のものも含めて全公開、誰でも参加できるパーミッションレス型です。かなり思想がブロックチェーン的です。
BGINの活動は世界的にも認められており、暗号資産規制を敷くFATFなどの公聴会にも招待され意見を述べたりしています。
結びに、分散金融に対する規制を考える上での提案として、共通理解の構築、各ステークホルダー同士がコミュニケーションを取り合う文化と環境の構築が重要であり、それを適宜評価・検証するプロセスが必要だと書かれてあり、なるほどなぁと納得させられました。とても勉強になります。みんな仲良く良い形の規制になると良いですね
元の資料は日本語なので、ぜひ読んでみてくださいね。
本日は以上です。
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ガバナンストークンによる投票で議決された内容を運営が拒否しました。DAOを標榜するプロジェクトがコミュニティの決めたことを拒否し開発をしないのは「DAO」ではないので「DAOだお」として揶揄されています
はい、本日は以上になります。
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