新しい技術や業界の事を学ぼうとする時の一般的な手法として、Google先生での検索や書籍を参照する方法が取られていると思いますが、ブロックチェーン技術に関する新しいこの業界はまだまだ生まれたばかりで体系的にまとまった情報は多くありません。
そこでまずは最初の一歩として業界構造を大きく俯瞰して見てみたいと思います。
役割をレイヤーに分けて考える
ブロックチェーン業界の構造を説明していきたいのですが、業界自体が新しいのでいきなりDEXやDeFiについて説明すると一気に自分とは関係の無い空想の話へと意識が飛んでしまいがちです。誰もが過去の経験に照らし合わせた方が理解を深めやすいと思いますので、インターネットのレイヤー構造を説明するスライドに照らし合わせてブロックチェーン技術が入ってくることでどう変わっていくのかを図示しながら説明していきたいと思います。
以下の図がインターネットの基本レイヤーで、上に行くほど我々がよく触れているWebアプリケーションに近くなる構造になっています。
インターネットの場合は、ネットワーク同士が通信し合うためのインターフェース層が一番下のレイヤーに存在し、そのインターフェースのルールに基づいてインターネットが構成され、その上で情報がトランスポートされ我々が普段扱うようなアプリケーションとして目に見える形になっているという構造図になります。この階層モデルの説明は主題ではありませんので、詳細はCaptionリンクをご参照ください。
インターネットのレイヤー構造をCryptoに当てはめてみる
これを参考に、自分が把握しているブロックチェーンの技術トレンドを振り分けてみたのが下の図になります。
これが絶対というわけではなく、あくまでインターネットの次の技術革新と言われるブロックチェーン技術がインターネットのレイヤー構造で言うとどこにどうやって使われているのか、概観を掴んでもらうために書いています。色分けもインターネットに合わせてだいたいのイメージで付けてます。これだけでは、それぞれのレイヤーがどんな役割を持つのかわからないと思いますので、詳細は後述していくのですが、Crypto関連のニュースに触れた時に「あぁ、これはこのレイヤーの話をしているんだな」ということがなんとなくでも把握してもらいたいと思って書いています。
各レイヤーを簡単に説明すると以下のようになるのですが、まずCrypto業界に流れる大きな流れから説明していきます。
Crypto市場全体は既存金融から資金が流入し2兆ドル市場まで成長している
dApps, NFT:我々が触れるアプリケーションのレイヤーです
Stable Coin:1$や1円に固定された仮想通貨で決済に使用されます
DeFi:分散型金融、銀行の代替え業務をここで行っています
DEX, Storage:価値交換を行い市場を滑らかにするレイヤーです
BaaS, OS:Banking as a Serviceによる決済機能とOSを提供します
Blockchain Interoperability:ブロックチェーン同士を繋ぐレイヤー
まず前提知識として、世界的なコロナのパンデミックによって、各国政府が法定通貨を経済政策として擦りまくっているため、通貨の価値が下がるインフレが発生し金融資産が軒並み高騰するトレンドにあります。
例えば、アメリカで流通しているドルの預金や貯金の市場が2,100兆円であるところを直近1年の経済政策で618兆円のドルを刷っているらしいです。単純計算で今持っているドルの価値が3/4に落ちている。という事実があり現金を資産価値のあるものに対比させるトレンドが顕著です。
BTCや他の仮想通貨も例外ではなく高騰しており、BTCは既存の投資信託や不動産のインデックスよりも昨年対比で最も優れたパフォーマンスを発揮し、「デジタル・ゴールド」と呼ばれるほどにその地位を確固たるものにしてきました。そして、2021年4月現在のブロックチェーン業界全体の市場規模は2兆ドルになります。(Coingecko調べ、直近だと2.5超ドルを突破している)
この2兆ドルの7割はBTCが支えており、デジタル・ゴールドとして覚醒したBTCが入り口となり各レイヤーに資金が流れているというのが業界の大きなトレンドになります。このBTCに流れ込んだ資金の一部が右側の各レイヤーの成長・投資資金として流れていく構造になっています。
この辺りの業界の大きなトレンドの話はこちらで詳しく解説しています
以下、簡単に個別レイヤーの説明になりますが、詳細はこのメルマガ内で少しずつ紹介できればと思っています。
dApps, NFTレイヤー
我々が普段から触れているWebアプリケーションのレイヤーです。dAppsは分散型アプリケーションの事を指し、管理者のいないLinuxやオープンソースプロジェクトのことです。
最近バズワード化しているNFTもこのレイヤーに入ると思います。NFTを利用したゲームやCryptoArt、チケットによる来場管理などがメインの用途として使われる事が想定されています。
一番イメージしやすい領域なので発展が楽しみなのですが、インターネットのレイヤー構造は一番下から発展していくので一番最後に発展する領域になっています。
NFTやdAppsに関する解説はこちらの記事で解説しています
Stablecoin
暗号資産を購入する決済に使われる法定通貨と等価値に固定された暗号通貨のレイヤーです。
一番最初に作られたBTCも最初は決済通貨として作られた背景がありますが、通貨の価格変動が大きく、昨日1万円で買えた商品がBTCの下落によって今日は1.5万円のようになってしまうこともあるため決済用途としては使いにくいモノになっています。
そこで、法定通貨のドルや円と同価値の通貨を決済に使おうという機運が高まり誕生したのがステーブルコインと言われる暗号通貨になります。
このレイヤーにはUSDTやUSDC、日本のJPYCやGYENなどが入っており、様々な決済に使われることが想定されているのですがまだまだ問題が多く法定通貨と同価値に保つ仕組みや通貨の発行母体に起因するリスクを解消する方法を模索のレイヤーになります。
DeFi(分散型金融)
2020年といえばDeFiバブル!という感じもしますが、このレイヤーは「投機」と見なされがちな暗号資産に実需をもたらし価値を安定化させる重要な役割を持っています。
以下の図で説明します。
DeFiはTVL(=Total Value Locked)という指標で比較されることが多く、意味としてはDeFiのスマートコントラクト上にどれぐらいの価値がロック(保存)されているのかを示す指標です。高ければ高いほど、使っている人や需要が高いことを示しており、55Bドル分の資金がロックされ、それだけ実需があることを示しています。
2017年ごとの暗号通貨バブルの際には、このDeFiのような実需を作り出すような仕組みがなかったために瞬間的に価格が暴騰し暴落しました。2020年にこのDeFiの仕組みが市場に認められイノベーターたちに使われ始めたことによって暗号資産に新たな実需が誕生しBTCやその他の暗号通貨の高騰をもたらした背景があります。
Exchange(DEX)
このレイヤーは、スマートコントラクトを使って暗号通貨同士や空いたストレージ容量を簡単に交換可能にしていく価値交換の領域です。
DEXはDecentralized Excahngeの略称で、分散型の取引所のことです。取引所といえば日本ではCoinCheckやbitFlyerが有名だと思いますが、これらは運営会社がいる中央集権型の取引所です。DEXと区別するためにCEX = Centralized Exchangeと呼ばれ区別されています。
Exchangeと書くと暗号通貨の取引所だけをイメージしてしまいますが、ここでは広義の意味で「価値を交換する」ものと捉えています。今後の技術の発展により交換される「価値あるもの」の候補として、スマホやゲーム機・EVなどの「空きストレージ」の交換が発展していく可能性がありこのレイヤーではストレージの交換・利用もスコープの中に入れて考えています。
BaaS, BlockchainOS
BaasはBanking as a Serviceの略称で、金融にまつわる機能をSaaS的に提供する領域です。
詐欺師とは誰もが取引したくない、銀行に行かなくてもスマホで取引できるようにしたい。そんなデジタル取引での【当たり前】を実装するレイヤーです。このレイヤーは最初にスマーコントラクトを発明したEthereumが圧倒的に強い領域で、後続のプロジェクトがEthereumよりも高い性能のブロックチェーンを開発して対抗するのですが圧倒的に強いコミュニティを持っているEthereumに最終的には軍配があがる、そんな構造になっています。
ブロックチェーン業界は短期間に破壊的なイノベーションが多々生まれている領域ですが、そのイノベーティブな発想が生まれる場がいつもEthereum上で他のBaaS系のプロジェクトはそれをコピーして作られたものが多いのが現状になります。
もう一点、BlockchainOSに間しては我々が普段から使っているスマホのAppleやAndroidのOSがナチュラルにこのBaaSやStablecoinでの決済が可能になるようになる世界を描いています。この辺りの領域はDeviceのシェアを握っているAppleなどが強い影響力を及ぼすことになると思っています。
Blockchain Interoperability
Interoperabilityとは「相互運用性」の意味です。このレイヤーはインターネットで言うとwwwやTCP/IPのようなプロトコルレイヤーに相当し、ブロックチェーン間の自由な通信を実現します。現在イのンターネットは日本のインターネットとアメリカのインターネットで自由に通信できていると思いますが、昔はつながっていませんでした。
現在のブロックチェーンも同じ状況になっており、ブロックチェーンにはBitcoinやEthereumなど様々なものがありますが、それぞれのブロックチェーンは独立しており現在は繋がっていません。一部、ETH上で扱うことが可能なWBTCなども存在していますが事例としては僅かでまだまだ滑らかなやり取りができるようなものではありません。
例えるならば、楽天経済圏とLINE経済圏でのポイントのやり取りは現段階ではできませんよね。今のブロックチェーンもこれと同じ状態です。
現在のブロックチェーン同士はそれぞれに独立しており、各ブロックチェーンを参照することでそのNFTや暗号通貨を持っているかどうかは確認できるのですが、その情報をコピー禁止の状態のままブロックチェーン間で情報を伝達することが難しい状況にあります。
ブロックチェーン上に刻まれてコピー禁止状態になったデータをオンチェーンデータ、通常のWebページなどのデータをオフチェーンデータというのですが、オフチェーンデータを一回でも挟んでしまうと、改ざんされているかもしれない可能性が出てきてしまいます。
これをオラクル問題と言うのですが、これを技術的に解決しようとするのがこの領域で、Chainlinkのようなプレイヤーが取り組んでいます。
業界の発展で見えてきた新しいレイヤー
以上説明したそれぞれのレイヤーを整理したのが先述した図になっており、先程の図に要素として【Storege】【Analysis】【Autimation】【Privacy】を足したものがこちらになります。
Storage:Exchangeの項目で説明した分散型のストレージのことを指しており、将来的にはスマホの空き容量を提供することで利用者から報酬をお小遣いとしてもらえるようになると考えています
Analysis:StorageやDeFiでの行動はブロックチェーン上に記録され残るので、その履歴を解析しAggregatarとしてユーザーに対して行動をレコメンドしてくれる機能を提供するレイヤーです
Auutomation:処理の自動化のレイヤーです。Aggregatarがおすすめする情報や毎月の支払い、積立などの業務をスマートコントラクトで行うのですが人間がそれを行うとミスが起きる可能性があるため安全に自動化する技術が必要です
Privacy:現在のパブリックなブロックチェーンは匿名といえど取引した人間を直接知っていればその人がいくら資産を持っているかが丸わかりです。個人の資産が除き放題の状態は非常に危険で事件に巻き込まれる可能性もあるので個人が特定されない状態で取引する仕組みに価値が出てくると考えています
とりあえず、業界をざっと見た所からレイヤーを分けて考えてみました。ブロックチェーン業界は毎日多くの情報がTopicsとして流れていきますが、その情報をこのレイヤーのフォルダに振り分けて考えていけば自ずと各レイヤーの方向性や課題が見えてくるのではないかと思います。
明日からはこの図を使ってどこのレイヤーの話をしているのかを図示しながら発信を続けていければと思っておりますので引き続きよろしくお願いいたします。
※このインターネットのレイヤーに当てはめて考える捉え方はYouberのMr.masaから教わりました。動画でわかりやすく解説してくださっているのでおすすめです。